宝石について少し専門的なお話5 (インクルージョンと個性)
インクルージョンとは内包物のこと
一般的に宝石はインクルージョン(内包物)の少ない方が透明度が高く、良しとされる場合が多いです。
また、インクルージョンは強度に影響を与えることもございます。
エメラルドはベリルの一種で硬度が高い割に、デリケートな石の代表格として語られるのはインクルージョンの多さが理由です。
それだけを聞くとただの嫌われ者のようですが、天然の証や個性でもあります。
時には鑑別の手がかりになることもございます。
エメラルドのインクルージョンはジャルダン(庭)とも呼ばれ、魅力のひとつにもなっております。
素敵なインクルージョンは芸術点として評価されるものもございます。
人工物とは異なり完璧でないからこそ、一種の“ゆらぎ”のような、不均一性の中に飽きない美しさを感じるのかもしれません。
インクルージョンの魅力的な石の代表例
私自身はあまり扱ったことはないのですが、クオーツの中にルチルやデュモルチェライトといった、
他の鉱物がインクルージョンとして入ったものが有名ですね。
植物のような内包物のデンドリティック・クオーツなど、クオーツ系はバリエーションが豊富です。
宝飾系では、デマントイドガーネットのホーステイルインクルージョンという、お馬さんの尻尾のような繊維状の内包物が入った石が人気です。
六条の黒いインクルージョンが入ったトラピッチエメラルドは、美しさというよりも野趣あふれる強さを個人的には感じます。
スターサファイアのアステリズム効果や、クリソベリルキャッツアイのシャトヤンシー効果も、繊維状のインクルージョンが生み出す自然の作品です。
ダイアモンドの中にガーネットを取り込んだ『ガーネット・イン・ダイヤモンド』というものもございます。
これは一般的な4Cのグレーディング評価は低いものの、コレクターさんからの評価は高いと聞きます。
こちらの記事トップのイメージ画像のスライスダイアモンドも個性的なインクルージョンが魅力的です。
私個人的には欠点の無い石よりも、個性や景色のある石が好きです。
お値段も比較的お求めやすく、普段使いにはピッタリかと思います。
他にも色だまりやカラーバンドのグラデーションが美しいものも素敵です。
下の写真はサファイアのカラーバンド。まるで青の絵具を平筆で描いたかのようです。
当方ではデザイナー目線で一つ一つチェックして石の仕入れを行っております。
石は天然の素材ですので欠点の無い石はほぼ存在しませんが、美観を大きく損なうようなタイプのインクルージョンや表面傷の目立つ物は避けております。
個性的で魅力的な石をお届けできればと思います。