宝石について少し専門的なお話2 (プロポーション)
宝石のかたちと見え方
宝石の顔となる表面の縦横の寸法は、(見た目上の)宝石の大きさに関わる要素です。
しかしながら宝石の大きさは重さ(ct)で表記されます。
このように宝石も質量分の体積をもった物質ですから、お顔の面積だけではなく、高さ(厚さ)についても注目してみましょう。
宝石において、高さ(厚さ)は輝きに関わる要素の一つです。
高さ(厚さ)の適正な石は正面からの光を反射して、濃淡のモザイク模様の輝きを放ちます。
この輝きに関わるのがパビリオン(Pavilion)と呼ばれるルースの下部分です。
プロポーションの理想的な石の場合、テーブル正面(Table)から入った光がパビリオン部で反射して、再びテーブル面から出て行きます。これが輝きを放つ仕組みです。
(各部の名称は記事のイラストを参考にしてください)
無色透明なダイアモンドであれば、4Cの『Cut』項目のように光学的な理想値(形)がある程度決まってくるものですが、色石(ダイア以外の宝石)になると話は複雑です。
※ちなみに光学的な理想値(形)は石の種類ごと一定の屈折率(空気中と宝石内部との境界面で生ずる、光の入射角αと屈折角βとの関係。屈折率=sin α/sin β)から、おおよその形が割り出せます。機会があれば別の記事で詳しく書きます。
色石のかたちの難しさと面白さ
色石は光学的な要素の他に、個々の色の濃さによっても美しく見えるバランスが変わってきます。
透明なダイアモンドとは違って理想的なかたちはケースバイケース。
一つの石の中にも色の濃淡があったり、パーティカラー(複数色)の石もあります。
光学的(輝き)に良いかたちと、色が美しく見えるかたちは必ずしも一致しませんし、
かたちを整えれば、そのぶん目方(ct)も当然ながら減ります。
色石においての理想的なかたちは、一概には言えないのが難しいところでもあり、面白いところでもあります。
(現実的には目方(ct)を優先してカットする場合がほとんどかと思います。)
私自身は既にカットされた状態の宝石を仕入れておりますが、宝石研磨に関わる方々はどの様なことを考えて、
この石をカットされていたんだろう…と思いをはせることもございます。
また、色石は価格が難しいです。
ダイアモンド(特にラウンドブリリアント)であれば4Cという厳格なグレーディング基準があるため、相場が分かりやすく、ルース(宝石単体)であればどこで買っても価格に大差は生じません。
飛びぬけたお買い得品は無いけれど、安心して買えるとも言えます。
その点、色石は明確な評価基準が無いので、形状も色も価格も千差万別です。
唯一、数値の出るキャラット(ct)を重視してカットする場合が多いです。色石に変形カットが多いのも、その辺の事情からです。
難しい反面、自分の感覚を信じて仕入れる面白さもございます。
理想から離れたかたちの可能性
薄いかたちの石はキャラット(重さ)に対してテーブル面が広く大きく見える事と、ジュエリーに仕立てたときに高さを抑えたデザインにできるという利点がございます。
その反面、光を透過しやすく透けるため、輝きは控え目となります。(下:参考写真)
これは『ウィンドウ』や『色抜け』と呼ばれて高級宝飾では避けられます。
宝石初心者は知らない概念ですし、あらかじめこの事を説明してくれる石屋さんがいれば、個人的には良心的と思います。
『ウィンドウ』の石も、大きさと透け感を活かしたデザインならば面白いチョイスですし、お客様の数だけ正解があると思います。
それぞれの宝石のページには高さ(厚さ)を含めたサイズや種類、処理といった【客観的情報】と、個人的な感想等を交えた【主観的情報】を分けて掲載しております。
普段使いジュエリーには数値的なスペックはもちろん、デザイナー目線の感想も併せて石選びのヒントにして、楽しみながら選んでいただければ幸いです。