ジュエリー制作についてのお話1 (概要)

HIKARUISHI(ひかるいし)ジュエリー制作概要

ジュエリー制作についてのお話

ジュエリーがいかにして作られているか、気になる方も多いのではないでしょうか。

ここでは全体的なジュエリー制作の流れと、HIKARUISHIでの手法の一例をご説明します。

概要のみでかなり省略した部分が多いのですが、それでも長いです。

もしこれを読まれて興味を持たれた方がいらっしゃれば、各々方で調べてみてください。

きっと、ジュエリーの面白さは宝石だけではないと思えてくるのでは!?

 

まずは基本的なところから。

ジュエリーの作り方を大きく分けると『地金からの手法』と、『鋳造する手法』の二つがございます。

 

地金から作る手法

1.地金づくり

K18やSv925などの合金を作るところから始まります。

K18YGならば純金と、割金となる純銀・純銅を決まった地金配合になるように正確に量り、バーナーで溶かし合わせて作ります。

 

2.板材、線材づくり

1で作ったものを『ローラー』と呼ばれる機材で潰すと板になります。鋼鉄製のパスタマシンを想像していただければ、ほとんどそのままの形です。何度も通して少しずつ薄くしていき、目的の板厚の板材にします。

このローラーには平面だけでなく、角溝も彫ってあるものもございます。角溝に地金を通すと角棒が作れます。

地金の線材やパイプは『線引き盤』と呼ばれる工具で、引き抜きダイス加工すると作れます。

あらかじめ多用する板材や線材のサイズが決まっていれば、部材を購入して使った方が早いです。

 

3.部品づくり

2で作った部材を切り貼りして部品を作っていきます。これも細かく説明するとキリがないので概要のみ書きます。

切断は糸鋸やニッパー。形成は金ヤスリやその他鉄製治具。曲げ加工はヤットコ等。接合はバーナーでロウ付け。

 

この『地金からの手法』を古くからの職人さんは『手造り』と呼んで鋳造と分けています。

例え一点物であろうとも、鋳造品に対しては手造りとは呼んでいなかったのですが、今では色々ものに対して『手造り・手作り・てづくり』といった言葉を使うので、何と呼べば良いのか分かりません。

最近は付加価値を付ける意味合いもあって『鍛造』と呼ぶこともありますが、前職が自動車業界だった私からすると、『間違ってはいないけど、誤解を招く微妙な呼び方』です。

 

HIKARUISHI(ひかるいし)ジュエリー制作概要2

鋳造する手法

1.蝋型づくり

鋳型の原型となるものを制作します。

一番代表的なものはワックス(蝋)型です。造形用のワックスを削ってジュエリー形状の蝋型を作ります。

これをCADで作る場合や、紙粘土、植物、アンティークレース等、電気炉内で焼失するもので有害なガスが出ないものであれば、様々なものが型になり得ます。

 

2.鋳造

1で作った蝋型に石膏(埋没材)を流し込んで、電気炉内で焼成。

蝋型は炉の中で焼失し、石膏の中に蝋型の形状の空洞だけが残り、石膏の鋳型となります。

そこに溶かした地金を流し込んで鋳造します。この鋳造法をロストワックスと呼びます。

鋳造までの準備工程や、金属の鋳込み方のバリエーションは多々あるのですが、ここでは省略させていただきます。

鋳造工程は専門業者様に任せる事が一般的で、HIKARUISHIでもお願いしています。

 

また、宝飾業界では指輪の空枠という、鋳造の半製品も売られております。

ある程度決まったサイズの石であれば手軽に指輪になるというもので、指輪の予算を宝石(ルース)重視で作りたいという場合に選ばれるものです。

HIKARUISHIでは全てオリジナルデザインかつ、宝石の形状も一点物が多いため、市販の空枠は一切使用しておりません

 

部品を作った後の工程は『地金』『鋳造』とも共通で、部品の接合、磨き、石留め、彫りと続きます。簡潔に流れだけを説明しましたが、細分化していくと更に多種多様な手法がございます。

全ての手法は一長一短で、最も優れている手法があるわけではございません

高度なジュエリーはこれらを適材適所に組み合わせて制作を進めていきます。

 

実践的な制作例

ジュエリー制作では一つの手法だけではなく、複数の手法を組み合わせて進める場合が多いです。

例えば…

 

1.鋳造の原型になるものを地金で作成

2.原型のゴム型をとり、そこにワックスを流し込んで原型と同じ形の蝋型を制作

3.鋳造する

 

この例で、なぜ最初に原型を地金で作るかと申しますと、地金で作ると板厚を一定にしやすい事と、寸法の精密な形状を作れるためです。

また、緻密なジュエリーでは地金での制作途中で何度も型をとる事もございます。

これはTVゲームでいう所の『セーブポイント』のように、次工程での失敗に備える意味と、バリエーション展開の分岐点をつくる意味がございます。

一つのジュエリーに『鋳造の部品』と『地金から作った部品』の両方を使う場合も多々あります。

HIKARUISHIでの制作においても、このような手法をとる事が多いです。

 

文明の利器と古典的工具

HIKARUISHIではCADのような現代的な文明の利器と、地金からの部品や手彫りタガネのような古典的な工具の、両方を組み合わせて制作する例もございます。大枠の流れを説明いたします。

 

1.大まかな形状をCADで設計・鋳造

2.ヤスリなどの手工具でフォルムを整え、細部を成形

3.同時進行で地金からの部品も制作

4.部品のすり合わせを調整し、各部品をバーナーでロウ付け(接合)

5.磨きのあと、指輪に宝石を石留め

6.洋彫りタガネを使って、模様やテクスチャーを手彫りして完成

 

CADと聞くと、どうしても冷たいイメージがあって、抵抗感のあるお客様もいらっしゃるかと存じます。

かくいう私自身も、最初は趣味で始めたジュエリー制作でしたので、文明の利器を避けていた所があり、しばらくは手造りのみにこだわって制作しておりました。

イタリアに渡り、宝飾を生業にしていらっしゃる諸先輩方との意見交換や、制作経験を重ねるうちに、プロとして生計を立てるためには、ある程度文明の利器と上手く付き合う方が良いという結論に達し、今に至っております。

これを妥協と言われてしまえば、否定はできません。

現時点の私の技量で、『価格』、『納期』、『一点物の宝石形状とサイズに対応したデザイン』といった要件を、普段使いのジュエリーとしてバランスさせるには必要であると判断いたしました。

 

全ての手法は適材適所

地金と鋳造、人間と機械、それぞれ得意とするかたちは異なります。

それぞれを役割分担して制作にあたっております。

 

機械(CAD)が得意なかたち

直線、平面、一定R曲線、一定角度線、対称形状

 

人間が得意なかたち

自由曲線、平面図で表現し難い三次元形状、ゆらぎ形状、数値化すると複雑になるもの全般

 

途中工程の大まかな形までを機械で設計して、データ化すると膨大になるような細部は人間の手で作った方が早くて美しいです。

特に石留めと彫りにつきましては人間の手以外では成し得ません。

全ての手法は適材適所です。

 

もし、ご予算・納期が多くかかっても、一からのハンドメイド制作を望まれるお客様には、別注にて承っております。

この場合、ハンドメイド制作の途中行程を細かく撮影した写真報告も付属いたしますので、ご希望のお客様はお問い合わせください。

また、デザインからのフルオーダーは当サイトの母体である【Root n】にて承っております。

 

今回はジュエリー制作の概要を俯瞰的に書いてきました。

要点をかいつまんだ内容に絞っても長かったですね。

『伝統の○○製法で作っております』とか『YES WE CAN』にみたいな短いメッセージの方が伝わりやすく、ブランディング的には強いとは思うのですが、諸々の意図があって手法を組み合わせているという内容でした。

 

このような長い記事を読んでくださる方の中には、ジュエリー制作にご興味があるか、既に習ったり作っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。もし、ご要望が多ければ、また詳細の内容も記事にするかも知れません。

ご拝読ありがとうございました。